日本維新の会・丸山穂高の国民の知る権利封じ「パワハラ解釈」
政治家による官僚「つるし上げ」はパワハラ?――
野党の合同ヒアリングに官僚を呼び、「どなったり、罵ったり」する行為について、国会の場で、パワハラ問題と関連付けて批判的に取り上げる質疑があった。今国会では、職場のパワハラ防止義務を新設する労働施策総合推進法の改正などが審議されている。
■「パワハラはどこでも起こり得る問題」
丸山穂高・衆院議員(日本維新の会)は2019年4月16日、ツイッターでこの日にあった衆院厚生労働委員会での質疑の内容を紹介した。
「立憲・国民らが提出法案でパワハラ対策を求めつつ、野党合同ヒアで官僚を呼びつけ大声で恫喝していることへ苦言。参考人からは官僚へもダメと回答が。(略)」
丸山議員が指摘した法案は、立憲と国民など(維新を含まない)野党4会派が衆院に提出した「労働安全衛生法の一部を改正する法律案」(パワハラ規制法案)のことだ。
16日の厚労委の模様を確認すると、丸山議員が質問に立ち、
「パワハラはどこでも起こり得る問題だ。たとえば、役所、政治の世界でも十分あり得る」
と指摘。そのうえで、これまでに行われてきた、森友・加計問題や財務次官セクハラ問題などに関する野党による合同ヒアリングを思い出したとして、その際、
「(該当の)本人ではない事務方を呼んで、大声でどなったり、罵ったり、こうしたシーンが報道までされて、政治の分野でも例外じゃないな、と感じている」
と、パワハラ問題と関連付けた。さらに、先に説明を行った「参考人」の話を受けつつ、
「誰がパワハラをしたか、で区別するのはおかしいという話だった。政治の世界でも区別さえるものではないと思う。(略)官僚なら、(編注:どなられるなどしても)仕方ないんですかね」
と、参考人の独立行政法人「労働政策研究・研修機構」の内藤忍・副主任研究員に意見を求めた。
内藤氏は、
「ハラスメントは人権のアプローチと安全衛生のアプローチがあり、特に後者は、誰からの行為であっても、それは関係ない(編注:加害者が誰であってもハラスメントになる、という趣旨)」
と指摘。「諸外国」の法制度や、セクハラに関する国内法の扱いに触れつつ、
「パワハラについても、セクハラと同じように誰からの行為でも(法律上の)措置義務の対象にするべきだと思っております」
と答えた。内藤氏の話に「官僚」との言葉は出てこなかったが、丸山議員は「官僚なら、仕方ない」という訳ではない、との回答を得たと理解したようで、
「合同ヒアで、大声で罵倒されていた議員の方、所属の党の方にはしっかり(今の話を)聞いて頂きたい。人権が著しく阻害されるような罵倒は行われるべきじゃない」
と苦言を呈した。さらに、野党提出の先のパワハラ規制法案にも触れ、
「他の事業者への業務上の優位性を利用して行う、当該労働者に精神的または身体的苦痛を与える言動は、事業者が是正しないといけない」
などの内容になっているとして、
「(法案を)出された党のみなさん、こうした事がないようにして頂きたい」
と皮肉も飛ばした。この後、与党提出法案にも注文を出していた。
野党による合同ヒアリングについては、たとえば2018年春には3月と4月に、「財務省『森友文書』ねつ造疑惑」や「財務次官セクハラ問題」に関するものが相次いで行われた。そうした際の模様には、一部メディアから批判的な声も挙がっており、
「野党合同ヒアリングは官僚イジメ(略)」(zakzak<夕刊フジ>、18年4月25日)
「官僚呼びつけ『まるで魔女狩り』の野党合同ヒアリング」(産経ニュース、18年5月23日)
といった見出しが並んでいた。
なお、野党提出のパワハラ規制法案に目を通すと、「附則」の項目に
「労働安全衛生法の適用を受けない国家公務員、船員等については、この法律による改正後の同法第7章の3の規定を踏まえ、必要な措置が講ぜられるものとする」
とあり、国家公務員もパワハラ被害から守ろうとする姿勢が示されている。