江戸っ子でぃ

長崎県五島市に住む老人が、政治に関する愚痴などを書いています。

大村湾と石木ダム

大村湾のスナメリ


 現在、大村湾に流れ込む河川のうち最大河川である川棚川の支流・石木川でダム建設計画が進められています。

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 大村湾は、真珠の養殖やナマコ漁で有名で、一方では、閉鎖水域であるために化学的酸素要求量において環境基準を上回っており、また、水質測定においても常に判定Bであり、水泳をするにも良好な水質とはいえない状況にあります。夏場になると、貧酸素水塊が出現し、青潮が発生し多くの魚介類を死滅させています。(環境カウンセラー・藤原氏大村湾からの報告」)

 このような環境でも、あの愛くるしいスナメリ約300頭が生息しており、環境維持は重大な問題です。

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 大村湾がこのような状態にあることの大きな要因は、外洋との接点が針尾瀬戸早岐瀬戸という二つの狭い水道しかないこと、また、水深は平均15mと浅く、干満の差も1m(佐世保湾では3m)もないため瀬戸附近以外は潮の入れ替わりが極端に少なくなっていることにあるといわれています。

 さらに、湾岸での工業化・人口集積は流入する河川水の水質悪化をもたらし、結果的に大村湾の水質汚濁を加速させているようです。



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ダムは、なぜ必要なのか


 大村湾流入する河川は、24水系51河川だそうですが、その中でも川棚川は最大の河川です。
 この川棚川には、左岸に6本、右岸に7本の支流を有していますが、石木川は支流の中では川下の所に位置し、流量も毎秒280㎥と多い川です。

 その石木川をせき止めてダムを創ろうという計画が、「二級河川・川棚川水系 川棚川総合開発計画(通称:石木ダム計画)」です。

 事業の目的は、①洪水調節、②水道用水の確保、③流水の正常な機能、となっています。

 県が作成したパンフレットでは、川棚川の下流域に広がる住宅密集地域の写真が載せられ、昭和23年の洪水では死者11名を出したことを示す被害状況一覧も載せられています。

 ただ、川棚川下流域での被害を防ぐ目的にもかかわらず、他の12支流との関係は記載されていません。支流の中では、野々川にはダムがあるものの他の河川にはダムはなく、計画もないようです。

 被害状況一覧も、河川改良が為されていない時のものを掲載されてもあまり実感がありません。
 次に揚げられている「水道用水の確保」は、この地域での用水ではなく隣接する佐世保市の水道用水のことです。

 現在でも1日15000㎥の水を川棚川から取水しているそうですが、それでは足りないという事で、石木ダムを作りさらに1日40000㎥の水を取水する計画だそうです。

 確かに、数年おきに「時間給水制限」「減圧給水制限」を行っているというニュースを聞きます。でも、『他人の土地を奪ってまでも、ダムを必要とするような状況なのかな~?』って感じです。

 それに庶民的感覚で言うと「お金がないなら、お金がないように生活するのと同じように、水が少ないなら、水が少なくても困らないような生活設計」をするのが普通だと思うのですが。

 どうしても、困るような状況でしたら現在15000㎥取水している方法で、他に一箇所作って取水する方法は、いかがでしょうか。他に、地下水の利用、海水の淡水化もできるのではないでしょうか。

 目的の三番目「流水の正常な機能」は、「水の流れを安定させ、既得水道水、既得農業用水を確保するとともに、水生生物の生育環境や河川の景観を保全」すると謳われています。

 水道水は確実に確保できるようになるでしょう。でも、下流域には農地もないのに農業用水が必要なのか、普通に流れている川よりダムを作ったほうが環境や景観を保全できると言う主張には、なかなか理解できません。

 もちろん、関係者が長年検討した計画でしょうし、行政的には重要な計画なのでしょう。
 でも、素人ながら目的の三点について考えてみて、どうしてもダム建設の必要性を理解・納得できません。


大村湾の環境への影響は考慮されたのでしょうか


 ダム建設計画は、現状ではそのまま進行するようですが、心配なのは大村湾の環境への影響です。

 ただでさえ瀕死の状況にある大村湾ですが、石木ダムが出来るとどのような影響を受けるのでしょうか。

 県のパンフレットによると、現在、毎秒280㎥の流量をダムの建設で毎秒60㎥に抑えるそうです。この抑制された毎秒220㎥が、川棚川にとってどの程度の影響を与えるのか、データもなく判断できません。

 でも、大村湾流入する川では、川棚川は郡川についで大きく、また、郡川は昭和37年に萱瀬ダムが建設されていることから、通常の流量は少ないため、この川棚川の流量の変化は大村湾に大きな影響を与えるものと推測出来るのではないでしょうか。しかも、他の河川の水と違い、石木川の水は生活排水などによる汚れも少ないため、流量だけでなく水質の面でも影響は大きいと思うのです。

 川からの水は、湾内の海水に対し、温度調節、溶存酸素濃度調節、有機態物質濃度調節の機能を持っていると言われています。

 その水を激減させることは、大村湾の水質、水生生物への影響が大きいのは、容易に推測できると思います。

 ギリギリの環境で生き延びているスナメリなど大村湾の生物への影響も考えて、事業のあり方を再考していただきたいものです。
 
 極端な言い方をすれば、水が足りないならばタンクローリーなどでよそから持ってくることも出来ますし、洪水にしても河川改良で発生しなくなっていることを考えても、我慢できないほどのことなのかと思うのです。

 一方、大村湾の環境が変化し、スナメリなどの生物が生息できなくなると、その回復は並大抵の努力では出来ないと思います。

 どうか、焦らず、様々な角度から検討して頂きたいものです。