春先の2・3月に多く発生するのですが、時として大きな犠牲を伴うことがあるのです。犠牲が発生しやすいのは、遠浅の海岸の奥附近です。
遠浅の海岸で、潮が引いた時に、牡蠣打ち(牡蠣を取る)をするお年寄りが、「あびき」が来るのに気づかずに、波に飲み込まれて死亡するという悲劇が起きたこともあります。
「自然」って・・・
当然ですが、人間の想像など、とても及びませんね。
長崎地方では、この時期、注意を喚起する情報が海洋気象台から出されます。
副振動(あびき)に関する長崎県潮位情報 第2号 平成21年2月25日10時30分 長崎海洋気象台発表 (見出し) 長崎県の沿岸では、海面の昇降や強い流れにより、低地での浸水や船舶等へ の被害が生じるおそれがあります。 (本文) 長崎県内の港湾や海岸及び河口付近では、今後も大きい海面昇降や強い流 れが繰り返し発生する可能性があり、船舶や海上係留物への被害、また、満 潮時前後の時間帯には海岸付近の低地で浸水のおそれがありますので十分に 注意してください。 25日10時00分までに、福江港で観測された海面の昇降の山から谷の 高さの最大値の発生時刻は24日23時19分、高さ及び周期は81センチ 、およそ20分となっています(速報値)。また長崎港で観測された海面の 昇降の山から谷の高さの最大値の発生時刻は24日23時34分、高さ及び 周期は157センチ、およそ30分となっています(速報値)。 なお、長崎港の25日これからの満潮・干潮の時刻は次のとおりです。 満潮 25日20時26分 26日9時00分 干潮 25日14時39分 26日2時49分
あびきとは・・・ あびきとは長崎湾で発生する副振動のことをいい、30~40分周期で海面が上下振動します。過去には大きなあびきで係留していた船舶の流失や低地での浸水被害が発生しています。あびきの語源は早い流れのため魚網が流される「網引き」に由来すると言われています。現在は長崎に限らず、九州西方で発生する同様な現象に対して広く用いられるようになっています。 副振動とは数十分周期の港湾の振動で、長方形の容器に水を入れ、一方の端を持ち上げて少し傾けてから元に戻すとしばらく水全体が左右に振動するのと同じ現象です。 あびきは東シナ海大陸棚上で発生した気象現象の擾乱(じょうらん)による気圧の急変が原因とされています。これによって発生した海洋長波が海底地形などの影響を受けて増幅していきます。湾内に入った海洋長波は共鳴現象などの影響を受けてさらに増幅し、湾奥では数メートルの上下振動になることがあります。 Hibiya and Kajiura (1982) による数値シミュレーションから、1979年(昭和54年)3月31日に発生した過去最大のあびきは、東シナ海をほぼ東向きに約110km/hで進行した振幅約3hPaの気圧波によっておこされたことがわかっています。