江戸っ子でぃ

長崎県五島市に住む老人が、政治に関する愚痴などを書いています。

ブログ・ハイジャッカー(第9話)

【第8話より続く】

  武田隠元五島藩を訪れたのは、寛永17年8月。

  ちょうど盆の初日のことだった。街のあちこちでは、霊を弔う念仏踊り

  の鐘の音が響き渡っていた。


 
  「これは、これは、遠い所、わざわざお出でいただきかたじけない。ど

    うぞ、まずはお茶でも。それとこのお菓子でござるが、これは、我が藩

    の銘菓で『チャンココ』と申すもので、なかなか美味しいものゆえ、ど

  うぞご遠慮なくお召し上がりくだされ。」

  「あー、いや、殿。直々にそのようにしていただきますと恐縮でござい

  ます。それにしましても『チャンココ』とは、珍しいお名前でございま

  すな。」

  「おう。それが、ほれ、今、あちこちから鐘の音が聞こえるでござろう。

  あれは、こちらの念仏踊りの囃子の鐘の音なのじゃが、あの念仏踊りの

  ことを『チャンココ踊り』と申してな。そこからの由来じゃそうな。」


   そう言うと、さっさとどこかへ姿を消してしまった。隠元をゆっくり

  させようという盛利の心遣いであった。



   次の日、盛次を伴って盛利がやって来た。

   隠元がくつろいでいる部屋に入ってきた二人は、早速、ホームページの

  話を始めた。

   五島藩の物産品の話しから、ホームページのデザインの話し、取り引き

  の方法から、代金の決裁の話し。

   話しは、次から次へと進んで行った。

  
   「代金の決裁は、どのような方法がよろしいでしょうか。業者の皆様が

   困ることがないようにしないといけませぬので、確実な方法を選ばれた

   ほうがよろしいかと思います。」

   「そうじゃのー。盛次の言うとおりじゃ。品物を送って、代金を受け取

   れないようなことにでもなったら、わしの責任になるからのー。」

   「電子決済もありますが、こちらにはオッパッピー銀行の支店はござい

   ますか。」

   「そのようなものは、聞いたことがないのー。」

   「それならば、最も初歩的な方法ですが、代金引換がよろしいかと思い

   ますが。」

   「そうか、それでは、そうしよう。ところで、このホームページを作る

   ための代金は、隠元殿にはいくらお支払いすればよろしいですか?」

   「そうですね・・・。ホームページを作る作業はたいしたことありませ

   んので、代金なんか要りませんよ。」

   「いや、いや。それでは、五島藩として申し訳が立ちませぬゆえ。遠慮

   なさらずに・・・。」

   「そうですか。それでは、私がこちらに参りました旅費をいただければ

   結構でございます。」



   隠元は、2日間五島藩で過ごして、江戸へ帰って行った。


   隠元が江戸に帰り、数日もすると五島藩のホームページが開設された。

  そこには、規模の小さな業者30店舗ほどが出品し、五島の物産を販売でき

  るようになっていた。



    「盛次、ホームページの評判はどうじゃ。品物の注文は来ておるのか?」

    「はい。早速、注文が入っております。ウニ、イカの一夜干し、椿油など

    が良く売れているようでございます。」

    「そうか。早速売れているのか。良かった、良かった。」


   
    盛利が、喜んだのも数日のことであった。



    「父上、大変でございます。注文が殺到いたしまして、どの店も品物が底

    をついてしまいました。」

    「なに?品物がない?それほど注文が来たのか。」

    「はい。毎日注文が増えておりまして、ウニなどは三日で底をついてしま

    いました。」



    こうした注文の多くが、実は、隠元の資金で行われているのであった。

                                 (つづく)