江戸っ子でぃ

長崎県五島市に住む老人が、政治に関する愚痴などを書いています。

おふざけ読物 『ブログ・ハイジャッカー』 (その2)

 

 

皆さん、お早うございます。

 

 

五島地方、今日も、曇り空でスタートです。

 

 

ところで、シカリさんのブログ、愚痴ネタも枯渇気味で、「何か他の物を」と考えた挙句、昨日から10年以上昔(ヤフーブログにお世話になっていたころ)に書いた読物をアップいたしております。

 

 

江戸時代と現代をゴッチャにしたような、ふざけた読み物(ただ、政治ネタがお得意のシカリさんですから、どこまでおふざけなのか・・・)です。

 

 

登場人物では、書いた当時のお笑い芸人をもじった人などが登場しますので、若い人たちには理解できないかもしれませんね。御免なさい。

 

 

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「ブログ・ハイジャッカー」(その2)

 

 

4、方針決定

 

 ボッシュと会ってからのひと月ほど、隠元はあちこちの知人と連絡を取り合ったり、図面を広げたり、様々な資料と格闘していた。

 もう数日で、新年を迎えるというある日。

 隠元は、アドメニアに帰ったボッシュに電話をかけていた。

 

 「この前の話だけど、一箇所だけ該当する場所が見つかったよ。それで、正月早々にでも現地調査をかけようと思っている。そこで、一つ心配なのは、幕府を説得することが出来るのか、ということだけど・・・」

 

 「隠元、そこは心配しなくていいよ。確実な場所を確保してもらえれば、あとは僕の仕事だ。とりあえず、着手金を送っておくよ。」

 

 「わかった。それから、君と僕の関係が表に出ることはないんだろうね。特に事前調査を僕の会社がすることも。」

 

 「大丈夫だよ。全て僕がやったことになるのだから。」

 

 「そうか。それを聞いて安心したよ。とりあえず、現時点で調査した内容と場所がわかる地図をメールで送るよ。」

  

 ボッシュの約束で少し安心したのか、隠元は久しぶりに二人の社員を飲みに誘った。

飲み会となると、いつものとおり西山須美子の甲高い声と、無題勝山の低音のブルースをいやと言うほど聞かされるのである。

 

 「ニシヤマ~~、スミコダヨ~~。」

 

 「パッパパヤーパー、パッパパヤーパー。」

 

 飲み会のときは、いつもこの調子で、二人とも周囲のことなど無頓着。完全な自己中であった。そして、この時だけは隠元はこの二人を採用したことを悔やむのであった。

  

 年が明けて寛永17年正月4日。

 出勤してきた無題と西山を前に、隠元は新しいプロジェクトの指示をしたのであった。           

   

 

5、無題の行方

 

 寛永17年1月。

 江戸にある藩制問題研究所では、社長の武田隠元は社員の無題勝山に五島藩の資料を集めるよう指示を行っていた。

 指示を受けた無題は、目的も告げられないプロジェクトにいささか戸惑いを感じていた。

 

 新たなプロジェクトの指示を受けた無題が、姿を消したのは2月も下旬のことだった。

 

 「西山君、最近、無題君を見ないが、どうしたんだい?」

 

 「私、知りませんけど。社長にも連絡ありませんか?出張するなら、きっちり旅費を請求する人なのに、請求もされてませんからね。どうしたんでしょうね。電話もメールも通じないんですよ。ホントに変な人なんだから。」

 

 「そうか、当面急ぐ仕事もないし、ほっとくか。」

 

 「ほっといて良いんですか?そうですね。いなくても困ることもなし、ほっときましょうか。」

 

 寛永17年6月下旬。

 行方不明だった無題が、ひょっこり出勤してきた。

 

 「無題君、どこ行ってたのよ。電話もメールも通じないなんて。」

 

 「実は、2月に結婚しまして、ちょっと新婚旅行に行って来たんですよ。オーストラリアの東海岸。帰りは、福岡空港に着いたもんで、例のプロジェクトのこと思い出しまして、そのまま五島藩の調査に行って来たってことですよ。」

 

 「はあ?結婚したの?社長も私も結婚式呼ばれてませんけど。」

 

 「結婚式なんて面倒なだけで、しませんでしたよ。五島藩までの旅費はこれだけですので、よろしく。」

 

 「あれ、君、ブルース調の語りは?やめたの?」

 

 「一応、僕も結婚したわけで、社会人としてキチンとしないといけないかな?なんて、自覚したわけですよ。」

 

 「ほおー。で、お土産は。」

 

 「・・・・・。」

 

 気まずかったのか、レポートを社長の隠元に渡すと無題は、さっさと帰ってしまった。

 無題が作成したレポートには、五島の藩の現状が記載されていた。

 

 《五島藩調査報告書概要》

   15000石、藩士約180名、人口約21000人

   かつては、朱印船貿易を行っていたが、寛永12年に禁止となった。

     交易相手・・・カンボジア、台湾、安南、ルソン、シャム

     商品(持ち出し品)・・・銅、鉄刀剣、銅器、漆器、蒔絵、樟脳、硫黄、屏風、扇子、食料品

     商品(持ち込み品)・・ 生糸、絹、絹織物、ドンス、更紗、時計、砂糖、薬品、香木、鹿皮、陶磁器

 

   朱印船廃止後、異国船が頻繁に出没するようになり、警備の増強が必要となっている。遠見番所7箇所を4箇所増設し、11箇所とした。

   その他、この数十年の主な出来事。

     朝鮮の役(文禄元年、1592年)への出兵。

       騎馬27人、歩武者40人、足軽120人、小人38人、乗馬2頭、下夫280人、船頭水主200人、軍船17隻、属船8隻、その他用人、祐筆、外科医、小物見役等24人

     江川城消失(慶長19年8月、1614年)

     仮陣屋構築(寛永15年、1638年)

     島原の乱寛永15年、1638年)、青方の加勢を得て120名派兵。

 

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 レポートを受け取った隠元は、チラッと見ただけで、机に放り出してしまった。四ヶ月近く姿を消していたわりには、内容のない報告であった。

                         

 

6、殿のブログ的生活

 

 翌日、出勤してきた無題は、隠元にポツリと言った。

 

 「五島藩の殿は、最近ブログを始めたとか、聞きましたけど。」

 

 「ほう、ブログをね。で、ブログタイトルは調べてきたか?」

 

 「はい。『殿のブログ的生活』です。藩の運営についての考えや悩みを書いているようです。」

 

 「そうか、それは良い情報をつかんできたな。」

 

 そう言うと隠元は、自分のパソコンに向かった。

 

 五島藩主・盛利の朝一番の仕事、それは自分のブログの訪問者の確認と数少ないコメントへの返事を書くことだった。

 昼間とて、城での執務は決裁が主で他にすることもなく、決裁が済むとさっさと自室にこもりブログの記事を書いているのであった。

 そんな盛利のブログに、最近、必ずコメントを寄せる者がいた。

 

 「盛次、この隠元とかいう者、最近、良く声をかけてくれるのじゃ。どこのお方かのー。」

 

 「父上、どこの誰かわからないところが、お互い、良いということもございますゆえ。」

 

 「そうか、そうか。それにしても良くわしの意見に賛同してくれるのじゃ。なんとなく気分のよいお方じゃ。」

 

 「そうでございますか。きっと、父上と同じようなお考えのお方なのでございましょう。」

 

 その数日後、再び、盛次は盛利の部屋に呼ばれていた。

 

 「どうじゃ、ブログを使って藩の活性化が出来ないものかのー。」

 

 「藩の活性化でございますか?良く理解できませぬが。」

 

 「いや、このブログを使って五島藩の魚とか、カンコロ餅なぞを売れないものかのー。」

 

 「物を売るのでございますか。それならば、ブログよりホームページの方が良いかと思いますが。」

 

 「ホームページか・・・。で、そのホームページを作るのは、お金が掛かるものなのかな。」

 

 「いいえ、ブログと同じでこのヤッホーのサイトを使えば無料で作れますよ。ただ、システムとかデザインが大事ですから、そこは専門家にお願いしたほうがよいかと思います。」

 

 「そうか。ヤッホーというサイトは便利なものじゃのー。そうじゃ、余の考えをブログに書いてみよう。だれぞ良き考えを教えてくれるやもしれぬからのー。」

 

 盛利は、その日のブログにさっそく藩の活性化とホームページの開設について、アイデアを求める記事を書いた。

 

 その記事を読んだ江戸の隠元は、小躍りしていた。

 

 「西山君、無題君にも伝えてくれないか。このブログをお祭りしてくれないか。」

 

 「お祭り?なんです、それ。」

 

 「ダミーを使ってでも訪問者を集中させてくれ。それと、殿の意見を褒め上げてくれ。」

 

 「それだけで、いいんですか?」

 

 「ああ。」

                        

 

7、隠元の策略

 

 次の日の朝、いつものように遅く出勤してきた無題に、西山は社長の指示を伝えていた。

 

 「無題君、社長から、ダミーを作ってでも五島藩の殿のブログに集中させてくれだって。」

 

 「それはいいんですけど、僕の給料が振り込まれていませんけど・・・。」

 

 「はあ?そりゃあ、そうでしょうが、だって、4ヶ月も行方不明だったのよ、貴方。首にならないだけ、ありがたく思わないと。」

 

 「でも、妻が給料を楽しみにしていまして・・・。」

 

 「いらないでしょう。4ヶ月も海外旅行を楽しむくらい裕福なんだから。おまけに、職場にお土産も買ってこないくらいケチなんだし。」

 

 「いや~、海外旅行といっても、妻の実家に帰っていただけで・・・。」

 

 「奥さん、オーストラリアの人?」

 

 「はい。・・・行方不明といっても、五島藩の調査もしてきたのですから。」

 

 二人のやり取りを横で聞きながら、隠元は、いつものように窓の外に眼をやり、五島藩に対する戦略を構想していた。

 少し離れたビルの屋上には、梅雨の終わりを告げるような強い雨に打たれながらアジサイが辛抱強く立っているのが見えた。

 それを見ながら隠元は、つぶやいた。

 

 <それほど時間をかける余裕もないし、直接、懐に飛び込むか・・・。>

 

 「社長、僕の給料ですけど、出していただけないのでしょうか。」

 

 「西山君、1月分ぐらい出してやれよ。一応調査はしてきたのだから。それと、西山君はブログ仲間を大勢持っていると言っていたけど、何人くらい持っているの?」

 

 「私のブログ仲間ですか?100人くらいかな?」

 

 「そうか。私の知り合いと無題君の知り合い、う?無題君は?」

 

 「さっき、社長が給料出してやれ、って言われた時には、外に出て行きましたよ。」

 

 「あいつ、知り合いとか、多いのかな?」

 

 「いないでしょう。これまで、友達と飲み会とか聞いたことないですもん。結婚できたのが不思議なくらいですよ。」

 

 「じゃあ、ダミーを100件作るように言っておいてくれ。あとは、昨日話したとおりだ。」

 

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 「はい。でも、どのように褒め上げるのですか?」

 

 「うん。そこは準備が出来てからにしよう。」

   

 隠元は、五島藩主のブログに書き込みを始め、何がしかの手ごたえを感じていた。少なくとも、顧客として取り込むには、これまでの客よりはやりやすい相手であることは確かであった。

 五島藩主は世間を知らないうえ、かなりお人好しのようであった。なにせ、隠元が書き込むようになって、わずか数回であるにもかかわらず色々相談するようになっていた。

 隠元には、五島藩主・盛利が何かに焦っている様子も読み取れていたのである。

                         (つづく)

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今日も最後までお付き合い下さり、ありがとうございました。

 

 

今日一日が、皆様にとりまして、素晴らしい一日となりますようお祈りいたします。

 

 

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<1月10日の誕生花>

ストック

花言葉:永遠の美、愛情の絆、求愛

 

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