安倍晋三首相は27日、首相官邸で自民党の萩生田光一幹事長代行と会い、野党側が要求している国会審議に応じる意向を伝えた。
11月1日召集の特別国会の会期を8日間から延ばすか、改めて臨時国会を召集して対応する方針だ。野党が森友・加計学園問題を徹底追及する構えのため、政府・自民党は審議の場を設けることに慎重だったが、首相としては「疑惑隠し」との批判が拡大するのを避けたい考えとみられる。<以下略>
「謙虚」発言に疑問符が付く動きが明らかになった。自民党は国会での野党の質問時間を削減し、与党分を拡大するよう野党側に提案する方向で調整に入った。安倍晋三首相(党総裁)が28日までに党幹部に検討を指示。衆院予算委員会などで与党と野党で「2対8」に配分する慣例の見直しを主張している。野党側から森友、加計学園問題を踏まえて追及を避ける思惑だと猛反発が起きるのは必至だ。<略>
▼委員会の質問時間 与党と野党で「2対8」が慣例なのは、自民党は党政務調査会の各部会で政府案を議論、了承した上で国会に提出するため。法案の作成過程で議論する機会が十分あると考えられているのが理由だ。一方で、野党側は割り当てられた時間を各党の議席数に応じて配分して決めていくのが通例。ただ、野党間の話し合いで割り振ることも多く、会派に入っていない無所属の議員にも、与党の追及に有効な質問ができる場合は時間をつくることも少なくない。加計学園問題で首相が出席した7月の閉会中審査でも自民党は「5対5」を要求、与野党交渉で「3対7」で折り合った。
加計学園の獣医学部新設について、計画を審査している文部科学省の審議会の答申が当初の予定より遅れ、11月10日となる見通しであることがわかった。
加計学園の獣医学部新設を認可するかどうか、文部科学省の大学設置審議会は今月末をめどに答申する方向で議論を続けてきたが、林文部科学相は27日、答申が11月前半にずれこむ見通しを明らかにした。
交通事故の被害者対策の財源として国の特別会計に計上されていた自動車損害賠償責任(自賠責)保険の運用益約1兆1200億円が、「国の財政難」を理由に20年以上前に一般会計に繰り入れられ、今も約6100億円が特別会計に戻されていない。このまま「返済」が滞れば、特別会計に残った財源も十数年で底を突く恐れがあり、被害者らは団体を結成し、返済を求めることを決めた。【江刺正嘉】
◇交通事故の被害者救済がピンチに
危機感を持つ交通事故の被害者家族や有識者らが先月結成したのは「自動車損害賠償保障制度を考える会」(座長=福田弥夫(やすお)・日本大危機管理学部長)。特別会計を所管する国土交通省(旧運輸省)は過去4回、財務省(旧大蔵省)との間で「返済期限」を定める大臣名の覚書を交わしたが、守られずに延長が繰り返された。4度目の期限は2018年度で、事実上の返済期限となる18年度予算編成が行われる今年末に向け、財務省などに返済を要請する。
この問題の発端は1994年度にさかのぼる。旧大蔵省が財政の逼迫(ひっぱく)から旧運輸省の特別会計に着目し、94、95年度、損保会社が集めた保険料の6割を国が預かって運用する「政府再保険制度」の運用益計約1兆1200億円を一般会計に繰り入れた。最初の覚書では00年度までに全額戻す約束だったが、03年度までに計約6400億円(元本分)が戻された以後は1円も返済されていない。その結果、元本と利子計約6100億円が戻されない異常事態が続いている。<略>
◇当事者ら「返済」求め
「車社会のセーフティーネットとして世界に誇るべき被害者救済事業の継続が危ぶまれる」。東京都内で先月あった「自動車損害賠償保障制度を考える会」の発足会合。福田座長ら出席者からは、自賠責保険の運用益約6100億円の「返済」を求める声が相次いだ。<略>
自動車メーカー労組などでつくる自動車総連の相原康伸会長(当時、現・連合事務局長)は「運用益が塩漬けされ、自動車ユーザーの保険料が適切に運用されていないのは問題。制度の持続可能性を毀損(きそん)している」と批判。日本自動車連盟(JAF)の矢代隆義会長(元警視総監)も「運用益が他に流用されるのは許されない。(大臣間の覚書が)空手形になるのではと心配している」と財務省をけん制した。