コソコソと自衛隊を海外派兵する安倍晋三!
集団的自衛権の行使を可能にし、自衛隊の任務や活動範囲を拡大する安全保障関連法の成立後、補欠選挙を除けば初めての国政選挙になる参院選。自衛隊の基地を抱える全国の「基地の街」では、与野党候補が舌戦を繰り広げ、隊員や家族の胸の内は任務とリスクのはざまで揺れている。【浅野孝仁、日下部元美、三股智子】
海上自衛隊佐世保基地、陸上自衛隊相浦(あいのうら)駐屯地があり、約5900人の隊員が暮らす長崎県佐世保市。長崎選挙区(改選数1)は自民現職と野党統一候補新人の事実上一騎打ちの構図だ。自民現職が「日米同盟の強化で戦争を未然に防ぐべきだ」と語れば、野党統一候補新人は「安保関連法は憲法を無視した法律」と反論する。
「業務だからやるしかない」。40代の海自隊員は任務を果たす覚悟は決めているものの「家族を守って死ぬのは納得できるが、家族ではない人を守って死ぬのは納得できない」とも思う。
沖縄県尖閣諸島沖で中国船の往来が頻発する中、佐世保基地を出港する際には子どもの顔を思い出すという。偶発的な衝突も懸念され「米国との同盟強化で、中国が日本に対する姿勢を硬化するのは当たり前。怖くないと言えばうそになる」。
娘の夫が海自隊員という市内の女性(65)の願いは「憲法を改正して自衛隊の存在を明記すること」。「日本だけでは国を守れない」から、米軍と連携を深めるためにも安保関連法に賛成している。
自民、民進、共産などから計10人が立候補した北海道選挙区(改選数3)。千歳市は人口約9万6000人のうち約3割が自衛隊関係者と言われ、陸自東千歳駐屯地に常駐する第7師団の隊員約290人は安保関連法施行後、初の国連平和維持活動(PKO)で南スーダンに派遣された。
市内に住む50代女性の息子は自衛官。「息子は自分と日本の国土を守るために自衛官になった。決して海外の紛争地に行くためではない。このままでは、日本の若者もアメリカの起こす戦争で血を流すようになってしまう」
陸自の30代男性隊員は「国にとってどんな安保政策が良いのか考え、期日前投票した。結果的に、それが家族の平和にもつながると思う」と話した。
陸上自衛隊中部方面総監部がある兵庫県伊丹市は約3500人の隊員が勤務する「自衛隊の街」。ある陸自隊員は「『戦争法』と言われ、家族が不安に思うかもしれない。改憲して自衛隊の存在と役割を明確に認めてほしい」。元自衛官の60代男性は「参院選では自衛隊と憲法を巡る議論の盛り上がりを期待していたが、経済の課題に引っ張られ、政権も与党もトーンダウンしているようにみえるのが残念だ」と話した。
◇◇安全保障関連法◇
憲法解釈を変更し、日本と親密な関係の国が攻撃されれば、日本が攻撃を受けていなくても自衛隊が反撃できる集団的自衛権を認めるなど、自衛隊の任務が拡大する。ほかに、米軍以外の国の軍にも給油などの後方支援ができるようになるうえ、あらかじめ「非戦闘地域」を指定して派遣してきたこれまでの活動エリアが「現に戦闘が行われている現場以外」に広がる。国連平和維持活動(PKO)では、離れた場所にいる他国軍らを自衛隊が助けに行く「駆け付け警護」など、従来の武器使用の決まりではできなかった任務も実施できる。このため「自衛隊の危険度が増す」という指摘がある。
最終更新:7月7日(木)22時15分