■株価下落傾向…経済対策は必定
例年10月から11月にかけて開かれる臨時国会が、今年は開催されない可能性が浮上している。政府・与党は、7日の内閣改造を経て、11月上旬の召集を検討するが、中下旬には安倍晋三首相の外交日程がめじろ押しとなっており、日程が厳しいためだ。ただ、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の交渉次第では、逆に来年までの「越年国会」になる可能性もある。(沢田大典)
◆与党メリット乏しく
臨時国会の有力視される日程は、11月上旬に召集して、安倍首相による所信表明演説を行い、各党の代表質問や、衆参予算委員会の集中審議を実施。12月の平成28年度予算編成前に、1カ月ほどで閉幕する案だ。
しかし、今月下旬から11月には日中韓首脳会談が予定されているほか、11月中下旬にはトルコで開催される20カ国・地域(G20)首脳会議への出席など、首相の外交日程が立て込む。
また、目立った案件がないまま国会を開けば、野党の政府批判ばかりが目立ち、与党にメリットは乏しいとして、与党内には臨時国会の開催そのものを見送る動きもある。
◆「みんな疲れている」
さらに、95日間延長で245日間と戦後最長となった通常国会の疲労感を理由に、与党内には“厭戦(えんせん)ムード”も漂う。「みんな疲れているから、できればやりたくない」(自民党幹部)というのだ。ある派閥領袖(りょうしゅう)級も「開いたはいいが、法案を通せなかったらみっともない」と消極的だ。
とはいえ、18年以降、臨時国会が開かれなかったことは一度もない。株価が下落傾向にある今年も、補正予算案を編成して経済対策に取り組まなければならないのは必定。首相は先月の党総裁再選を受け、今後は「アベノミクスの第2ステージ」として経済最優先で臨む方針を発表しており、掛け声倒れとの批判も招きかねない。
一方で、TPP交渉が合意すれば、最速で年明けにも各国が署名、国会承認も可能となる。このため、臨時国会の会期を11月から来年1月までに設定し、閉会後、日を置かずに通常国会を召集する事実上の「通年国会」案もささやかれる。
TPPは農産品の関税大幅引き下げを含むため、与党は来夏の参院選への影響を警戒。越年国会案は、臨時国会でTPPを早期に承認し、来年の通常国会で27年度補正予算案や28年度予算案を成立させ、夏までに負の印象を和らげる狙いがあるが、先は見えない。