江戸っ子でぃ

長崎県五島市に住む老人が、政治に関する愚痴などを書いています。

日本国憲法についての自主学習(その2)

憲法改正論議で現在言われているのが、「外国の憲法は、何回も改正されているのに、日本の憲法が改正されないのは第96条が厳しすぎるからだ」と言うもの。











本当に、外国の憲法は、何回も改正されているのだろうか?で、少し調べてみました。すると、確かに何回も改正されています。










ドイツ・・・・1949年、旧西ドイツでドイツ連邦共和国憲法が制定されて、統一後もその憲法が使用されているが、旧西ドイツ時代に35回。統一後も23回。合計58回も改正しています。


アメリカ・・・1787年、憲法が制定されて以来、改正回数は18回。修正案の提案件数は11,000件。中には、州議会の承認が得られなくて現在も進行中の改正案もあるそうです。


フランス・・・24回の改正。


カナダ・・・・18回の改正。


イタリア・・・15回の改正。


韓国・・・・・9回の改正。





確かに何回も改正されていますが、その国によって歴史や制度が違い、単純に比較できないみたいです。


















では、なぜ、日本では憲法改正が行われなかったのでしょうか?日本人は、憲法に無関心だったのでしょうか。










無関心でも、改正を行うことを、ためらったわけでもありません。











日本人は、これまでずっと、国のあり方について考え、議論し続けてきたのです。それは、主に憲法第9条を変えるべきか、そのまま維持するべきか、という形で議論されてきました。その結論としての現状維持だったのです。










憲法が改正されなかった原因として、第96条が厳しすぎるからという意見もあります。安倍首相などは、「たかだか三分の一の反対で改正案を国民に提案できないのはおかしい」と言っています。






















では、外国の憲法は、そんなに改正しやすくなっているのでしょうか。




ドイツ・・・・両院で三分の二以上の賛成。


フランス・・・両院の過半数で提案でき、国民投票で有効投票の過半数の賛成または両院合同会議で五分の三以上の賛成で成立。ただし、フランスの憲法は人権規定がなく、これまでの改正も統治機構に関するものばかりで、例えば、植民地や海外領土、欧州連合に関するものです。


アメリカ・・・両院の三分の二の賛成、あるいは全州議会の三分の二の議会の賛成で提案。全州議会の四分の三の賛成で承認。


韓国・・・・・大統領権限、あるいは、クーデターなどの際に改正。1987年の第9次改正(現時点で最終改正)のみ与野党の妥協、国民的協議で改正。









ドイツにしてもアメリカにしても、決して手続きは簡単ではありません。しかし、改正はされている。










では、なぜ、外国では改正が出来るのか。それは、国民や国民の代表である議員が納得できる改正案を提示しているからにほかなりません。









現在、手続き論に矮小化して、どうでも出来る制度にしたい人たちは、これまでの国民の総意を認めたくないのでしょう。






















ところで、自民党は第96条をどのようにしたいのでしょうか。








<現行憲法>

第96条 この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行われる投票において、その過半数の賛成を必要とする。
②改正憲法について前項の承認を経たときは、天皇は、国民の名で、この憲法と一体をなすものとして、直ちにこれを公布する。


<自民党改正案>
第96条 この憲法の改正は、衆議院又は参議院の議員の発議により、両議院のそれぞれの総議員の過半数の賛成で国会議決し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、法律が定めるところにより行われる国民投票において有効投票の過半数の賛成を必要とする。
②改正憲法について前項の承認を経たときは、天皇は、直ちに憲法改正を公布する。








以上のように、三分の二を過半数とし、国民投票の有効投票の過半数で成立するようになっています。もう一つ、現行憲法では「国民の名で」としていますが、これもスッポリ落としています。それもそうでしょう。天皇を元首とし、国民の国ではなく、天皇の国になるのですから。(と言っても、天皇家には迷惑な話で、天皇という制度を意のままに利用しようという人々の国を目指しているのでしょうけどね)












ここで、もう一つ大きな問題が残っています。それは、国民投票を行うために手続きを定めた「日本国憲法の改正手続きに関する法律(俗に、「国民投票法」と言われる)」の問題です。











例えば、投票の成立の問題です。最低、有効投票率が50%以上とか、40%以上とかの規定がないのです。極端な話、10%でも成立し、その過半数で承認されるのです。つまり、有権者数の5%の意思で憲法改正が通ってしまう。もちろん、投票に行かないのが悪いのだという意見もあります。シカリさんも、迷ってしまいます。











もう一つ重要なのは、投票への提起の仕方です。例えば、第9条の改正にだけ投票を求めるのか、他の改正もまとめて投票にかけるのか、という問題です。自民党は、後者の一括投票で実施すると言っています。











憲法は、当然のことながら、前文を含めて全ての条文に重要な意義があります。当然、条文によって国民一人ひとりの意見も分かれると思います。9条改正は賛成だけど、12条の改正は認めたくないとか、あるいは、その逆だったり、それを一括で「賛成」「反対」で投票をさせようというのです。











いかに、国民の意見を面倒だと思っているか、分かると思います











こうした96条の改正について、かつて憲法改正論者だった慶応大学の小林節教授は「立憲主義を無視した邪道だ」「改憲したいのであれば、説得力のある案を提示し、国民に納得してもらうのが筋だ」と述べています。











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小林教授(ネットからお借りしました)












この96条の問題について、安倍首相は「たかだか三分の一の国会議員の反対で憲法改正を国民に提示できないのはおかしい」とのべました。











この発言には、三つの問題があります。まず、これまで改正できなかったのは、「たかだか三分の一の国会議員の反対」で出来なかったのではなく、国民世論の根強い反対があったからです。次に、なにより三分の一の議員を納得させる案を作れない自分たちの責任を棚上げして、制度の問題にすり替えている。三点目に、「たかだか」というけれど議員は国民の代表です。それを「たかだか」と言う感覚。











安倍首相や橋下市長、さらにその取り巻きさんたちの幼稚な発想は知れているが、いわば、「この算数のテストは苦手だから、国語のテストにしてよ」と駄々をこねているようなものです。実に、みっともなく、卑怯です。












でも、こうしたデタラメが通りそうだから怖い。もう、後戻りは出来ないのですよ!


















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