五島地方、昨日あたりから、すっかり春めいております。皆様、いかがお過ごしでしょうか。 |
今日の記事は、例によって、21日付け長崎新聞「うず潮」に掲載されました記事の原文をアップします。 |
いつにもまして、地域限定的な内容です。ごめんなさい。我慢して、読んでや~。 |
称(たた)える心
<沖うらゝ 知れる汽船も 通らずや>
昨年11月、五島生まれの俳人・大野きゆう句集「沖うらゝ」が出版された。
平易な言葉で記された俳句は、大野の生活風景をほうふつとさせ、五島の昔日を手に取るように見せてくれる。
同時に、この句集を編纂した先輩方の故郷の先達に対する気持ちが、読者に迫ってくる。第三章には、高浜虚子編の「新歳時記」に採録されたきゆうの二十六句を載せているが、まるできゆうという記念碑を素手で磨き上げるかのような丁寧な解説がつけてある。
ところで、俳句にうとい私は、妙なところに心を奪われてしまった。それは、「五嶋馬」「船住居」「金魚玉」など、当時の五島を伝える言葉の数々。例えば、五嶋馬は小さな馬、つまり、日本在来種である対州馬のような馬で、ほとんどが軍用馬として戦地に送られたことなどは、五島の歴史に興味を持つ者にはたまらない。
きゆう自身、五嶋馬には特別な思いがあったのか、この句集の13句が馬を句材としている。
<初荷曳く 嶋の子馬の 揃ひけり>
この句集発行について、五島文化協会の筑田会長は序で「その功績を称えてきゆう翁の初句集を刊行できますことは、まことに望外の喜び」と述べている。
私の人生の中で、誰かを称える、という発想はあまりなかったように思う。日々の生活と、自らの立場を維持することに汲々とした人生。
しかし、この句集の発刊に携わられた方々は、地元の珠玉を掘り起し、称え、後世へつなぐ努力を喜びとされている。
激動の時代に淡々と五島を読み続けたきゆうの心とその先達を称える人々の心の連なりは、私たちに潤いと自信を与えてくれる。五島には、アリナミンの材料「アリチアミン」を発見した藤原元典、東京ヤクルト株式会社を設立した松園尚巳など多彩な先達がいる。
うららかな春の日差しのもと、彼らの記録に目を通し、敬い称える心を養いたい。
(句集の入手は、五島文化協会のホームページから)
皆さんも、俳句でも作ってみては、いかがです?え?そんな暇は、ない?すみませ~~ん。 |