2016年の日本人が選択した道【安倍総帥のもと独裁体制の強化】
憲法改正に前向きな勢力が参院でも3分の2の議席を占めたことを受け、安倍晋三首相は11日の記者会見で、自民党改憲草案をたたき台に、与野党の合意形成が進むことに期待感を示した。ただ、公明党は拙速な議論に慎重。首相の自民党総裁任期は2018年9月までで、実際に改憲発議や国民投票にまでこぎ着けられるかは見通せない。
「わが党の案をベースにしながら3分の2を(どう)構築していくか。これがまさに政治の技術だ」。会見で首相はこう強調。9条改正による「国防軍」創設を明記するなどした自民草案に関しては、「そのまま通るとは考えていない」と述べつつも、議論の出発点にしたいとの意向をにじませた。
12年に公表した自民草案は、前文で「日本国は、長い歴史と固有の文化を持ち、国民統合の象徴である天皇をいただく国家」と位置付けるなどと保守色が濃く、公明党には抵抗感がある。国の権限を強め、国民の権利を必要以上に制限しているとの批判も根強い。
公明党は9条改正は当面不要との立場。山口那津男代表は11日、首相との会談で、憲法改正について「国会で落ち着いて議論を深めていくべきだ」と要請。斉藤鉄夫幹事長代行はテレビ朝日の番組で「(改憲は)相当時間がかかる。ここ1、2年でどうこうという話ではない」と自民党をけん制した。
自民党が「改憲勢力」のおおさか維新の会との接点をどう探るかも焦点だ。同党は、教育無償化や憲法裁判所の設置などを公約に掲げ参院選で議席を伸ばしており、馬場伸幸幹事長は11日の記者会見で、「自民党の草案全文を議論するということにならない。自民党も(改憲項目を)絞らないといけない」と指摘。9条改正には慎重な立場を示した。
「安倍政権での改憲阻止」を訴えてきた民進党は、参院選で改憲勢力の伸長を許したことで、難しい対応を迫られそうだ。岡田克也代表は、憲法改正について「国会でしっかり議論すべきだ。審査会を動かすことは異論はない」としながらも、「首相は立憲主義に関する考え方を明確にしてもらいたい。全く間違った理解で憲法を論じると、とんでもないことになる」と指摘した。
改憲の是非を問う国民投票は、国会発議から60~180日以内に実施される。首相の任期中に国民投票を行うには、逆算すれば18年の通常国会で発議に持ち込む必要がある。自民党は参院選挙区の「合区」解消や緊急事態条項の創設などから議論の糸口を探るとみられるが、各党の利害を調整し、発議まで至るハードルは極めて高いのが実情だ。