新国立競技場の建設計画について、安倍首相が白紙撤回を表明した。
このタイミングでの表明について、政治的思惑もあるのではないかという指摘も、少なくない。
ある政府関係者は、建設費の高騰の問題は、長引くほど、どんどん批判が強まると述べていた。安全保障問題で内閣の支持率が下がる中、安倍首相は、週内の決断、そして白紙撤回するという強い言葉が必要と、首相自ら判断したものといえそう。
安倍首相は、16日夜も、オリンピック組織委員会会長の森元首相と与党議員も交えて会談するなど、17日、森元首相の了解を取りつけるにあたり、事前の接触を進めていた。
森元首相は「(どんな話をしたのか?)そういう話を、皆さんにする資格はない」と話した。森元首相は、組織委員長として、政財界、またスポーツ界まで幅広い人脈を持っていて、安倍首相としては、競技場計画の撤回にあたっては、森氏の了解を取ることが不可欠と判断した。
また、ある別の政府関係者によると、建設費の高騰をめぐる責任問題は、責任者が不在の構図になっていると指摘した。
今回、安倍首相が自らの判断と責任で、見直しを決定して発表するというスタイルの形が取られた。
そして、もう1つ大事なポイントは、「白紙ゼロベース」というもの。
首相周辺は、今週前半の段階では、計画の見直しというのは腹は固めていたものの、設計事務所との折衝がうまくできていなかったこともあり、「白紙」と表現するには、最後、この数日での、首相の決断だった。
新たなコンペを今後、行ったとしても、オリンピックに間に合うという確約を取ったことで、最終的に首相が言葉を選んで、今回の決断をしたというもの。
東京都の舛添要一知事は17日の記者会見で、2020年東京五輪・パラリンピックの主会場となる新国立競技場の建設計画見直しについて「決める前にできなかったのか。あまり楽しい気分ではない。こんな朝令暮改をやるなと言いたい」と述べ、国の対応を批判した。
都はこれまで競技場建設費のうち500億円程度の負担を国から求められていたが、知事は「(計画を)白紙からやり直すなら、われわれも(負担の検討を)ゼロからやり直すしかない」と語った。