江戸っ子でぃ

長崎県五島市に住む老人が、政治に関する愚痴などを書いています。

ブログ・ハイジャッカー(第7話)

 【第6話より続く】

  次の日の朝、いつものように遅く出勤してきた無題に、

 西山は社長の指示を伝えていた。



  「無題君、社長から、ダミーを作ってでも五島藩の殿

  のブログに集中させてくれだって。」

  「それはいいんですけど、僕の給料が振り込まれてい

  ませんけど・・・。」

  「はあ?そりゃあ、そうでしょうが、だって、4ヶ月も

  行方不明だったのよ、貴方。首にならないだけ、ありが

  たく思わないと。」

  「でも、妻が給料を楽しみにしていまして・・・。」

  「いらないでしょう。4ヶ月も海外旅行を楽しむくらい

  裕福なんだから。おまけに、職場にお土産も買ってこな

  いくらいケチなんだし。」

  「いや~、海外旅行といっても、妻の実家に帰っていた

  だけで・・・。」

  「奥さん、オーストラリアの人?」

  「はい。・・・行方不明といっても、五島藩の調査もし

  てきたのですから。」



   二人のやり取りを横で聞きながら、隠元は、いつもの

  ように窓の外に眼をやり、五島藩に対する戦略を構想し

  ていた。


   少し離れたビルの屋上には、梅雨の終わりを告げるよ

  うな強い雨に打たれながらアジサイが辛抱強く立ってい

  るのが見えた。

   それを見ながら隠元は、つぶやいた。



   「それほど時間をかける余裕もないし、直接、懐に飛

   び込むか・・・。」

   「社長、僕の給料ですけど、出していただけないので

   しょうか。」

   「西山君、1月分ぐらい出してやれよ。一応調査はして

   きたのだから。それと、西山君はブログ仲間を大勢持っ

   ていると言っていたけど、何人くらい持っているの?」

   「私のブログ仲間ですか?100人くらいかな?」

   「そうか。私の知り合いと無題君の知り合い、う?無題

   君は?」

   「さっき、社長が給料出してやれ、って言われた時には、

   外に出て行きましたよ。」

   「あいつ、知り合いとか、多いのかな?」

   「いないでしょう。これまで、友達と飲み会とか聞いたこ

   とないですもん。結婚できたのが不思議なくらいですよ。」

   「じゃあ、ダミーを100件作るように言っておいてくれ。あ

   とは、昨日話したとおりだ。」

   「はい。でも、どのように褒め上げるのですか?」

   「うん。そこは準備が出来てからにしよう。」

   


    隠元は、五島藩主のブログに書き込みを始め、何がしかの

   手ごたえを感じていた。少なくとも、顧客として取り込むに

   は、これまでの客よりはやりやすい相手であることは確かで

   あった。

    五島藩主は世間を知らないうえ、かなりお人好しのようで

   あった。なにせ、隠元が書き込むようになって、わずか数回

   であるにもかかわらず色々相談するようになっていた。

    隠元には、五島藩主・盛利が何かに焦っている様子も読み

   取れていたのである。

                       (つづく)