江戸っ子でぃ

長崎県五島市に住む老人が、政治に関する愚痴などを書いています。

ブログ・ハイジャッカー(第16話)

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【第15話より続く】

  寛永18年12月。

  五島藩家老の七里善喜は、この半年の被害補償額の集計を行い愕然としていた。

     赤瀬漁場 5,400両(3網分)
     一般農民   50両
     一般漁民  600両

  合計して、6千50両に上っていた。1両を約10万円で換算すると、6億500万円に

 なるのであった。

  報告を受けた盛利は、その額に実感を持てなかった。

   「七里、赤瀬漁場の補償は、途方も無く大きいのー。」

   「はい。確かに。しかし、内訳はこのようになっておりまして、間違いはご

    ざいません。」


    **********************************

     1網・・・船10艘、漁民30人従事、1回の水揚額20両

     6ヶ月・・1網の網揚げ回数90回

     補償額・・20両×90回×3網=5,400両

    **********************************

    
    「ふむ。赤瀬漁場は、これほど大きなものであったのか。じゃが、この計算で

     行くと、幕府から受け取った6万両は、たちまち、なくなるではないか。」

    「はい。これは半年での被害補償額ですので、現在のペースで推移いたします

     と5年も持ちませぬ。」


   七里の言葉に、一堂、つばを飲み込んでいた。


    「あー、いや、いや。そうは言いましても、もう、工事も終盤のようでござい

     ますゆえ、被害補償が長く続くとは考えられませぬ。」

    「そ、そうか。終わるのか。」

   盛次の工事は終わるとの説明に、盛利は胸をなでおろすと同時に、無意識に浮かせ

  ていた腰を下ろし、一堂を見渡した。
   
   「皆、本年は何かと気苦労の多い年であった。本当に、ご苦労であったのー。僅か

    ではあるが、餅代を支給するゆえ、家族そろって良い年を迎えるように。それで

    は、七里、後は頼むぞ。」


   安心した盛利は、家来達に餅代を支給する約束をすると、そそくさと自室に帰って

  いった。




   一方、江戸の「藩制問題研究所」では、冬のボーナスではなく、退職金の話しが行

  われていた。


     「二人とも、これまで色々お世話になった。私ね、年が明けるとアドメニア合

      衆国に留学しようと考えているんだ。それで、この事務所も今月限りという

      ことで、これ退職金だ。受け取ってくれ。」
    
     「・・・・。」

     「僕も妻の実家の農場を手伝うことにしたので、やめようと思っていたんですよ。」

   
   いつも誰よりも大騒ぎする西山須美子は、一人、呆然としていた。やがて、隠元から手

  渡された包みを開け、のけぞるように驚くのであった。


     「社長。こ、こんなに頂いていいんですか?えー、と。500両ですけど・・・。」

     「え?これ、そんなに入っているの?」

     「この1年数ヶ月の我が社の働きは、それだけの価値があったということだ。すまん

      が、会社の解散を理解してくれ。幸い、無題君は、奥さんの実家に行くというか

      ら、良かったが、西山君は、どうする?」

     「・・・、今日は忘年会のことでも話そうかな、なんて、思っていたんですから、

      会社を辞めて何をするか、なんて言われても・・・。」

                                    (つづく)