憲法論議のかなり重要な部分に影響を与える(と思われる)新事実を発見しました。 |
最近、ひょんなことから民俗学に興味を抱いたシカリさん。その大御所である宮本常一のエッセー集を読んでいて、とても、興味深い一文を発見しました。 |
いわゆる政治系の本でないので、なかなか注目されないと思うのですが、偶然、気づいたのです。 |
その前に、現行憲法の制定過程についての記事を読んでください。 |
問題は、現行憲法はアメリカの押し付け、という主張は正しいのか、という点にかかることです。 |
「私」は言うまでもなく宮本常一です。次に、「先生」は宮本の師匠で当時大蔵大臣を務めていた澁澤敬三のことです。それで、「幣原さん」というのは、戦後最初の総理大臣・幣原喜重郎のことです。 |
文章は、「私」と「先生」の会話を中心としていますが、戦後の状況を見て回った宮本が澁澤の自宅に報告に行き、役所(大蔵省)から帰宅した澁澤の話からスタートしています。 |
・・・かえってきた先生は「幣原さん(当時首相)は大変なことを考えておられる。これから戦争を一切しないために軍備を放棄することを提唱しようとしておられる」と興奮気味に話された。
「軍備を持たないで国家は成り立つものでしょうか」とおたずねすると「成り立つか成り立たないかではなく、全く新しい試みであり行き方であり、軍備を持たないでどのように国家を成立させていくかをみんなで考え、工夫し、努力することで新しい道がひらけて来るのではないだろうか。一見児戯に等しい考え方のようだが、それを国民一人一人が課題として取組んでみることだ。その中から新しい世界が生まれてくるのではなかろうか」といわれた。これは実にむずかしいことである。しかし日本人としてやらねばならないことではないかと思った。・・・
【日本図書センター刊「宮本常一~民俗学の旅~」143~144Pより】
当時の要職にある人の興奮ぶりが良くわかると思います。見たことも聞いたこともない「非軍備国家」を目指すという幣原首相の方針に、周囲の人々は胸を躍らせていたのです。 |