賠償金の不足分は国民負担で【福島原発事故】
決まりそうで、決まらない原発事故の賠償スキーム |
政府は10日、原発事故賠償について基本的考え方をまとめたようです。 |
賠償額に上限を設けない、第三者委員会が東電の財務状況を調査し事実上政府の管理下に置く、リストラの徹底など6項目の「確認事項」をまとめたそうです。 |
その内容について、12日に決定し発表することとなっていましたが、決定できなかったみたいです。 |
具体的には、賠償総額を数兆円と見込み、賠償は4年で完了する予定らしいです。 |
賠償は東電が担うわけですが、不足する分は東電以外の9電力が負担金を賠償支援機構に拠出し、国も交付国債(上限は決めないみたいです)という形で支援するというものです。 |
国が出した資金については、東電と他の電力会社で負担して、10年分割で支払う予定とのこと。 |
でも、なんか不安と不信が残ります。 |
とりあえず賠償が出来る枠組みを作るのは良いのですが、最終的に『事故に対する責任に応じた分担』になる形が見えないということです。 |
しかし、福島の被害者にしても、マスコミにしても『東電の責任』と言いますが、『東電』とはなんでしょうか。 |
現在、『東電』と言われるものの中で責任を取る形として言われているのが、社長以下役員の報酬カット、社員の年収2割カット、原発推進に携わった退職者の負担、大幅なリストラの実施などです。 |
つまり、現在負担を求められると言われているのは、『東電で働いている者』あるいは『東電で働いていた者』です。株主とか金融機関の責任は、どうなるのでしょうか? |
一時流行りましたね、『会社は株主のもの』という主張。 |
原因究明は、三つの機関を設置して行われるそうですが、それと賠償にかかる責任がリンクするのか、『政府』に設置される様々な機関が公平な判断をするのか、その人選はオープンに行われるのか、など不安と不信をぬぐえません。 |
ところで、皆さん、当然のごとく賠償を求めていますが、根拠はあるのでしょうか? |
今回の原発事故は、「想定外」ということですが、そうなると「認識なき過失」による事故ということですね。 |
こうなると民法や刑法によって責任を追及することは難しくなります。 |
原子力損害の賠償に関する法律 (定義) 第2条2項 この法律において「原子力損害」とは、核燃料物質の原子核分裂の過程の作用又は核燃料物質等の放射線の作用若しくは毒性的作用(これらを摂取し、又は吸入することにより人体に中毒及びその続発症を及ぼすものをいう。)により生じた損害をいう。ただし、次条の規定により損害を賠償する責めに任ずべき原子力事業者の受けた損害を除く。 (無過失責任、責任の集中等) 第三条 原子炉の運転等の際、当該原子炉の運転等により原子力損害を与えたときは、当該原子炉の運転等に係る原子力事業者がその損害を賠償する責めに任ずる。ただし、その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によつて生じたものであるときは、この限りでない。
第2条第2項からは、身体的被害を意味しています。避難による損害とか、風評被害は想定されていません。 |
『そんなバカな』ですよね。事故はありえないと言う前提で作られた法律ですから。ところが、平成11年の東海村JCO臨界事故で周辺住民への被害が発生しました。 |
この時の被害申出件数8,018件、除外件数1,035件、補償確定件数6,983件、補償金総額154億円です。(平成22年5月時点) |
補償の対象は、①身体の障害、②検査費用、③避難費用、④財物汚損、⑤休業損害、⑥営業損害、となっています。 |
今回もこの基準が適用されるのでしょうが、そのほとんどが長い紛争審査を経ています。 |
さて、いずれにしても損害の賠償はしないといけない。でも、東電の体力で支払えないとなると、誰かに負担を求めるしかありません。そこで言われているのが電気料金の引き上げです。 |
12日に政府方針が決まらなかったのも、こうした点で意見が割れたのでしょう。 |
しかし、原発推進は電力会社だけで行ったことではありません。『政治主導』で進められたものなのです。 |
国民の代表が決めた以上、最終的には国民が責任を負わなくてはいけないと思います。 |
そういう意味では、弱者に負担を強いないように、一定レベル以上の電力使用料金を累進的に引き上げ、それを財源とするのが妥当でしょう。しかも、東電管内だけというのは許されないことです。全国一律の基準で引き上げるべきでしょう。 |
もちろん、賠償決定の全ての過程の情報が開示されることと、東電で儲かってきた株主・金融機関の負担を始め東電関係者が100%力を出し切ることが前提条件ですが。 |