ブログ・ハイジャッカー(第12話)
【第11話より続く】 大きな契約を終えた盛利は、先日までの商品不足による不安から 解放されて、ホッとしていた。 「つばき姫、今回は大きな仕事が出来たぞ。五島藩は、これまでに ない賑わいで、皆の生活も豊かになるぞ。」 「どのように、なるのでございますか?」 「そうじゃなー、三井楽の地で大きな工事が始まる。土地を売った農 民達は、そこで働くことが出来るのじゃ。」 「土地を売ってしまった農民は、何人くらいいるのですか?」 「200人はいるかのー。」 「200人もの農民が、農地を売ったのでございますか?」 「ああ、皆、土地を売った金で家を作ったり、墓を作ったりできると大 喜びしているそうじゃ。」 「そうでございますか。」 「なにか、疑念でもあるのかな?」 「はい。その者たちは、農地を持っていれば子々孫々まで生活出来るの でございましょう?それで工事が終わった後は、どのようになるので ございましょうか?五島藩で生活出来るのですか?それとも、どこか へ出て行くことになるのでございますか?」 「そこまではわからぬが、皆も喜んでおるし、今、豊かになれるのであ るから、良いではないか。普通に暮らしておっても家なぞ作れぬぞ。」 「それで良いのでございましょうか。」 つばき姫は、それ以上続けなかった。 盛利は、久しぶりにゆったりした気分で自分のブログを見ていた。訪問者 も10人程度に戻り、のんびりとコメントを読み、返事を書いていた。 数日後、盛利のブログにこれまでにない名前の書き込みが見られた。 「ん?なんじゃ、これは。ムーディー?ムダイ?・・・<五島藩は、アド メニア合衆国に乗っ取られてしまいますよ。土地の売買契約は、解約し たほうが良いですよ。一日も、早く。>・・・アドメニア合衆国?乗っ取 られてしまう?ワケのわからんことを書き込む人もおるものじゃのー。」 盛利は、気にも留めずに他の書き込みに返事を書いていた。ここのところ隠元 からのコメントは全くなくなっていた。昨日も、先の隠元の苦労に感謝するコメ ントを送っていたが、返事も寄せられていなかった。 よほど忙しいのだろう、そう思う盛利であった。 (つづく)