なにやら、良きかほり。
これは、ひょっとすると・・・、やっぱり。
私の大好きな「カレイ」の煮付け。
他に、オカラに、昼の残りかカツが二切れ。
年取ると晩飯はこんなものでよくなった。
食卓に着き、何気に「このカツは、ほんまもんの豚肉か。」
すかさず、妻は「あんたを騙したところで、何もでないのは
私が一番わかっていますけど。」
昔なら、何か一言二言、言い返したものだが、
人生、残り少ない身の上、隠し玉も無い。
仕方なく「このカレイの皮のところ、コラーゲンたっぷりやね。」
言わなくて良いものを言ってしまい、追撃を食らう羽目になる。
「あんたの場合は、顔の肌じゃなく、頭のほうね。」
もう、すっかり会話は遮断されてしまった。
あ、あ、あ、若い頃は、食べたくなるほど可愛かったのに。
あの時、食べてしまっていればよかった。(パクリました。ごめん。)
確かに、私の顔はもう細胞分裂をし尽くして、これ以上新陳代謝の
しようもない細胞で埋め尽くされている。のっぺりと。
だからと言って、頭のことを言わなくても良いじゃないか。
年取っても、傷つくもんだよ。
気の弱い私が、ここまで生きてこれたのは、髪が抜けてくれたおかげなのに。
日々募るストレスの数々を、私は心にためることができず、
頭皮の緊張で切り抜けてきた。
緊張し、張り詰めた頭皮は毛根を窒息死させ、ハラ、ハラ、ハラ、と。
それでも、若いうちは次から次に新しい毛が出てきていたもんだ。
それも、もう十数年前からは、終戦前の東南アジア戦線みたいに
なんの補給も無くなってしまった。
その事実に気づいたときの、私のショックと来たら、絵にも描けないくらい。
人生の終わりのような、そんな、すーっごく落ち込んだんだ。
それでも、家族のためと思えばこそ、禿をかかえて仕事に行き、
若い上司から、理不尽な仕事を押し付けられ・・・。
あれ、何書いてんだ??
今日の五島は、朝から大雨だったけど、あれは私の気持ちの
先取りだったのか。
今夜は、悪い夢を見そうだよ。